光のもとでⅠ
 言われたことをひとつひとつ反芻するも、よくわからない。
 性格が合うか、と問われたら正反対な気がするし、仕草がかわいいっていうのは小動物っぽいっていうことか?
 話していて楽しいと思うよりは、落ち着く。
 たまに変な思考回路を披露されて驚かされる。
 それよりも、何を考えているのか、自分の言葉をどう受け止めてくれたのかが知りたくて――。
 そうだ、俺は何が好きというよりは、ただ翠を知りたいと思う。
 人に対してそう思ったこと事体が初めてだった。
「そこまで悩む問題か?」
「……どこが、って言えない」
 仕方なしにそう答えれば、
「おい、司。それは全部って言ってるんだよな? おまえ、意外と臆面ない男だったのな……」
 ケンは呆気にとられたふうで、「じゃ、俺先にあがるわ」と、部室の施錠を頼まれた。
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