光のもとでⅠ
「臆面ない男――? 誰が、だ」
 どこが、と言えないだけでどうして全部になるのかも不明だった。
「ケン、言葉が足りない……」
 しばらくはケンが出ていった戸口に目を向けていたものの、吹き込んだ風がきっかけとなり外へ視線を移す。
「……感情を言葉にするのは難しいな」

 ある程度髪が乾くと病院へ向かった。
 学校から病院までの道のりはなだからな下り坂ということもあり、心行くまで風を感じることができる。
 風のおかげで髪はすっかり乾いたはずなのに、病院に着く頃には新たに汗をかいていた。
 自転車を停めると、いつものように正面玄関で汗を引かせてから九階へ上がる。
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