光のもとでⅠ
 ナースセンターに藤原さんはおらず、病室かと思えばそこももぬけの殻だった。
 点滴スタンドに輸液がぶら下がっていることからすると、お風呂の時間なのかもしれない。
 暑くも寒くもないそんな部屋で、俺はソファに横になった。
 さすがに部活での疲れが溜まってきているのだろう。
 身体が妙に重い。
 明日には整体へ行こうと思いつつ、身体を横にすればすぐに眠りに落ちた。



「きゃっ……」
 翠の声がやけに近くで聞こえたかと思えば、直後、翠が降ってきた。
「っ……翠っ!?」
「……ごめんなさい」
 俺の首と肩の間に顔を突っ込んだまま口にする。
 何がどうしてこうなっているのか、と思いつつ、左手は点滴が刺さっていることから身体を支えることができなかったであろうことはすぐにわかった。
 右手は――手をつこうとしたが手遅れだった、というところだろうか。
 その手は俺の胸の上で所在なさ気にしている。
「……いいけど、早く起きてくれる?」
 こういう密着はちょっと勘弁願いたい……。
 今、翠の体重の大半が俺の胸の上にあった。
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