光のもとでⅠ
22 Side Akito 01話
自分の家に戻ると、電気も付けず寝室へ直行し、ベッドに身を投げ出した。
どうしてこんなことになったんだか……。
どう言い表したらいいのかわからないほどの衝撃。
彼女に拒否されるというのはこんなにもつらいものなんだな……。
暗闇に目が馴染んできたところで胸もとの携帯が震え始めた。
携帯を手に取ると、メールの着信を知らせるLEDライトが煌々と点滅する。
ピンク色の点滅ということは彼女から――。
件名 :さっきはごめんなさい
本文 :本当に嫌いとかではないんです。
でも、傷つけてしまったと思うから……。
だから、ごめんなさい。
明日、お昼ご飯を作りに
仕事部屋へうかがってもいいですか?
もし、お邪魔でなければ、一緒にいたいです。
自分だって戸惑っているだろう。なのに、俺にしたことを省みてこんなメールを送ってくる。
そんな余裕はないだろうに……。
いや――余裕がないからこそ、だろうか。
普段なら口にしないような言葉、"一緒にいたい"という文字が胸に刺さる。
翠葉ちゃん、君は俺を振るつもりだろう? なのに、どうしてこんなメールを送ってくる?
きっと、期限付きとでも思っているのだろう。
「……返信はしなくちゃいけないよな」
そう思って返信画面を立ち上げた。
件名 :無理、してない?
本文 :警護は解除されたから、
無理に来なくても大丈夫だよ。
無理でなければ来てほしいけど、
無理だけはしてもらいたくない。
今、無理をすることでのちに引き摺ることになるのならば、今は無理をしてほしくない。
ただでさえ色々と抱えている彼女に、これ以上のものを抱えてはもらいたくなかった。
送信すると、数分で返事があった。
件名 :気持ち上では無理じゃないんです
本文 :一緒にいたいです……。
でも、体が拒否反応を起こす……。
でも、やっぱり側にいたいです。
だから、明日はお邪魔させてください。
……本当に、いつもなら言わないことをすらすらと言ってくる。
しょうがない……腹を据えるか。
件名 :了解
本文 :材料はどうする?
言ってくれれば揃えて
おくよ。
そのくらいはさせてほしい。……と言ってもコンシェルジュに用意させるだけだ。
しばらくすると、材料を書いたメールが届いた。
材料を目に、何を作ってくれるのだろうか、と少し明日が楽しみになる。
それでも、前置きはしておかなくてはいけないだろう……。
件名 :用意しておく
本文 :料理、楽しみにしてるね。
それと、明日明後日は俺からは
翠葉ちゃんに触れないし近寄らない。
翠葉ちゃんが大丈夫だと思うなら
翠葉ちゃんから寄ってきてほしい。
どんな君でも好きだよ。
今日はゆっくり休んでね。
俺からは近づかないから、だから君から寄ってきてほしい。
俺はいつだってここにいる。君さえ手を伸ばしてくれたらいつでもその手を取れるし、その覚悟はあるんだ。
十時を回ってしばらくすると静さんから連絡が入った。
『今マンションに帰ってきたところだ』
「あぁ……すっかり忘れてた」
『おまえが飲みに付き合えと言ったんだろう?』
「そうでした……」
『なんだ、声が暗いのは気のせいか? まさか手を出して即効振られたとかじゃないだろうな?』
なんてことを言ってくれるんだ、この人は……。
「ご期待に添えなくて申し訳ないんですが、違いますから。ちょっと予想外なことが起きただけです」
『まぁ、いい。うちへ来い。おまえが好きな茶色い液体を持って帰ってきた。クルーズから持ってきたからものはいいぞ」
……そりゃ、ホテルのバーから持ってきたとあらばものはいいでしょうよ……。
「すぐ行きます。俺、今日は管を巻く勢いあるんで覚悟してください」
『ずいぶんと物騒な物言いだな」
「えぇ、どうぞお楽しみに」
そう言って携帯を切った。
未だ部屋には明かりのひとつも点いていない。
手を振り上げ反動で身を起こすと、洗面所へ顔を洗いに行った。
どうしてこんなことになったんだか……。
どう言い表したらいいのかわからないほどの衝撃。
彼女に拒否されるというのはこんなにもつらいものなんだな……。
暗闇に目が馴染んできたところで胸もとの携帯が震え始めた。
携帯を手に取ると、メールの着信を知らせるLEDライトが煌々と点滅する。
ピンク色の点滅ということは彼女から――。
件名 :さっきはごめんなさい
本文 :本当に嫌いとかではないんです。
でも、傷つけてしまったと思うから……。
だから、ごめんなさい。
明日、お昼ご飯を作りに
仕事部屋へうかがってもいいですか?
もし、お邪魔でなければ、一緒にいたいです。
自分だって戸惑っているだろう。なのに、俺にしたことを省みてこんなメールを送ってくる。
そんな余裕はないだろうに……。
いや――余裕がないからこそ、だろうか。
普段なら口にしないような言葉、"一緒にいたい"という文字が胸に刺さる。
翠葉ちゃん、君は俺を振るつもりだろう? なのに、どうしてこんなメールを送ってくる?
きっと、期限付きとでも思っているのだろう。
「……返信はしなくちゃいけないよな」
そう思って返信画面を立ち上げた。
件名 :無理、してない?
本文 :警護は解除されたから、
無理に来なくても大丈夫だよ。
無理でなければ来てほしいけど、
無理だけはしてもらいたくない。
今、無理をすることでのちに引き摺ることになるのならば、今は無理をしてほしくない。
ただでさえ色々と抱えている彼女に、これ以上のものを抱えてはもらいたくなかった。
送信すると、数分で返事があった。
件名 :気持ち上では無理じゃないんです
本文 :一緒にいたいです……。
でも、体が拒否反応を起こす……。
でも、やっぱり側にいたいです。
だから、明日はお邪魔させてください。
……本当に、いつもなら言わないことをすらすらと言ってくる。
しょうがない……腹を据えるか。
件名 :了解
本文 :材料はどうする?
言ってくれれば揃えて
おくよ。
そのくらいはさせてほしい。……と言ってもコンシェルジュに用意させるだけだ。
しばらくすると、材料を書いたメールが届いた。
材料を目に、何を作ってくれるのだろうか、と少し明日が楽しみになる。
それでも、前置きはしておかなくてはいけないだろう……。
件名 :用意しておく
本文 :料理、楽しみにしてるね。
それと、明日明後日は俺からは
翠葉ちゃんに触れないし近寄らない。
翠葉ちゃんが大丈夫だと思うなら
翠葉ちゃんから寄ってきてほしい。
どんな君でも好きだよ。
今日はゆっくり休んでね。
俺からは近づかないから、だから君から寄ってきてほしい。
俺はいつだってここにいる。君さえ手を伸ばしてくれたらいつでもその手を取れるし、その覚悟はあるんだ。
十時を回ってしばらくすると静さんから連絡が入った。
『今マンションに帰ってきたところだ』
「あぁ……すっかり忘れてた」
『おまえが飲みに付き合えと言ったんだろう?』
「そうでした……」
『なんだ、声が暗いのは気のせいか? まさか手を出して即効振られたとかじゃないだろうな?』
なんてことを言ってくれるんだ、この人は……。
「ご期待に添えなくて申し訳ないんですが、違いますから。ちょっと予想外なことが起きただけです」
『まぁ、いい。うちへ来い。おまえが好きな茶色い液体を持って帰ってきた。クルーズから持ってきたからものはいいぞ」
……そりゃ、ホテルのバーから持ってきたとあらばものはいいでしょうよ……。
「すぐ行きます。俺、今日は管を巻く勢いあるんで覚悟してください」
『ずいぶんと物騒な物言いだな」
「えぇ、どうぞお楽しみに」
そう言って携帯を切った。
未だ部屋には明かりのひとつも点いていない。
手を振り上げ反動で身を起こすと、洗面所へ顔を洗いに行った。