光のもとでⅠ
「……だから、もう一度言ってくれない?」
 本当なら、不安がってる翠を安心させてやれたらいいのに……。
 それなのに、俺は今、自分を優先させている。
「え? あ……大丈夫だから、がんばって?」
 意味が通じないかと思った。
 でも、翠はこういうところできっちりと俺が欲する言葉を返してくれる。
「……ありがとう」
 翠は俺の顔を覗き込むようにして、
「緊張してる……?」
「それ相応に」
 去年も行っている。
 でも、去年は入賞はできなかった。
 だから今年こそ――と思っている分、気負いが大きいのかもしれない。
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