光のもとでⅠ
 翠にペースを乱されるのはいつものことだ。
 でも、最近はことさらひどい気がしてならない。
 あんなに必死な様を見せられると、思わず勘違いしそうになる。
 別に置いていったりしないのに、慌ててあとをついてこようとしたり、視線が合うだけで目を逸らされたり……。
「視線に関しては前からか……」
 ふいに、図書棟の仕事部屋で何度か接したときのことを思い出す。
 男の免疫がなくて、視線を合わせるのも男が近寄るもの苦手、という顔をしていた。
 でも、さっきの翠はそういうのとは違って――。
 何がどう違う、と明確には言葉にできないけれど、何かが違って見えた。
「翠に関しては考えてもわからないことが多すぎる」
 外のベンチに腰掛け数分すると携帯が鳴った。
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