光のもとでⅠ
「きっかり十分」
 自分の頬が緩むのがわかった。
「翠?」
『うん、電話したよ』
「……十、数えてくれない?」
『え……?』
 心底不思議そうな声。
 何を言われているのかわからないといった感じの声が聞こえた。
「数、一から十まで数えてくれない?」
 まさか、翠の携帯に自分の声が録音されているとは思いもしなかった。
「翠は録音しているのに、俺は録音してない。……ずるいだろ?」
 携帯の録音データを聞かされたとき、心臓が止まるかと思うほどに驚いた。
 録音されている声は秋兄のものだと思っていただけに、不意をつかれた。
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