光のもとでⅠ
『じゃ、数えるよ?』
 翠は戸惑いを帯びた声を発し、すぐに数を数え始めた。
 以前、俺が翠に数えたときと同じように一定のテンポで。
 俺が何度も言わされたように、何度でも聞いていたかった。
 でも、ずっとそこにいさせるわけにもいかない。
 そう思って振り返り病棟を見上げる。
 携帯ゾーンがある場所は、ガラス張りの六角柱が飛び出したようなつくりになっている。
 そこを見ながら、
「最後、一緒に数えて」
『うん』
 ふたりの声が重なったとき、ふわりと優しく風が頬を撫でていった。
 数え終わってもまだ九階を見ていると、
『……ツカサ、大丈夫だから、がんばってね』
「ありがとう。じゃ、おやすみ」
 最後、少し強引な切り方だったかもしれない。
 そんなところもあの日の電話と変わらない。
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