光のもとでⅠ
「くっ……見てて飽きないな」
 普段から電話というツールをあまり率先して使わない妹だ。
 きっと、何を話したらいいのか、今さらになって必死に考えているのだろう。
「相手はあの司だからな」
 きっと、淡々とした答えが返ってきては慌てるんだ。
 司、か……。
 司にはものすごく気の毒なことをした。
 インターハイ前ともなれば、メンタルに影響を受けるようなことは避けたかっただろう。
 それなのに、これだ――。
 司の記憶も先輩の記憶も無くした翠葉。
 そのうえ、先輩にはまだ会ってすらいない状態で司に惹かれ始めている。
 こんな状況を司はどう思うのだろうか……。
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