光のもとでⅠ
「なんかあった?」
『ううん、何もない』
 翠は普通に答えた。
 何も隠し事をしているふうではない。
「じゃ、どうして電話?」
 わからなかった。
 今まで、携帯が鳴るときはたいてい何かがあったときだったし……。
『……ただ話したかっただけって言ったら、怒る……?』
 自分の耳を疑った。
 そして、続けざまに、
『ごめんなさいっ、怒った? あの、やっぱり切るからっ――』
「怒ってない。怒ってないから少し落ち着け」
 怒るどころか思考停止だ、バカ――。
『……本当?」
「本当、少し意外だと思っただけだから」
『意外……? 私はこんなふうに電話したことはない?』
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