光のもとでⅠ
「でも、麻酔科医をこっちに回せるほど人員の余裕はないんじゃないかしら。そのあたりは医局に訊くしかないわね」
 そこをなんとか、と思ってしまう自分がいる。
 私はただ、相馬先生とふたりになるのが怖いだけだ。
 昇さんですら、慣れるまでには少し時間がかかった。
 けど、相馬先生は――どうしても慣れる気がしない。
 だって、見るからに怖いんだもの。
「嬢ちゃん、別に取って食いやしねーよ」
 どこか自嘲気味に笑ったように見えたのは気のせいだと思う。 
 だって、そのあとに続く言葉は、「ご希望とあらば取って食いますが」だからだ。
「相馬、ふざけたこと言ってないでカルテに目を通してらっしゃい」
「はいはい」
 相馬先生は面倒臭そうに立ち上がり、昇さんと一緒に病室を出ていった。
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