光のもとでⅠ
「先生……治してもらえますか?」
「おう、患者一号だからな。善処するぜ?」
 先生は悪人顔でニヤリと笑う。
 藤原さんが言っていたとおり、腕はいいのかもしれない。
「そうだ、嬢ちゃん両手出しやがれ」
 素直に両手を差し出すと、手首を先生の両手に掴まれた。
「これは鍼灸の見方なんだが、脈で身体のバランスがわかるんだ」
 触れるだけの力加減と、少し強めの力加減。
「浅いとこの脈と深いところの脈でわかるものが違うんだ」
 つまり、触れるだけの力加減のときは浅い脈を、強く押したときには深い脈を診ているのだろう。
「ストレスの脈が強いな。それから、胃腸も最悪だ。肺の脈が少し強い。風邪には気をつけろ。……ま、全体的にいいところなし」
 言って手を放す。
「少しずつだ。少しずつ直していく。気長に行こうぜ」
「……はい」
 ここにきて初めて、相馬先生がお医者さんぽく見えた。
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