光のもとでⅠ
「どうして記憶を失ってしまったのかがずっと不思議で、でもどうしても思い出せなくて……」
 記憶のない部分の話を聞いてもパズルははまっていかなかった。
「記憶の無い部分の話を聞いても、記憶が戻るっていう感じじゃないの。ただ、知識が補足されるだけって感じ」
 手元に視線を落としてポツリポツリと口にすると、頭に優しい重力が加わった。
「翠葉、思い出せるまでゆっくり過ごせばいい。今は治療が優先」
 そう諭してくれたのは蒼兄だった。
「そうだよね……。まずはここから出なくちゃ」
「でも、無理は禁物よ? ゆっくり治療を受けて、しっかりと元気になりなさい」
 お母さんに言われてコクリとしっかり頷いた。
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