光のもとでⅠ
「今日帰国したばっかだ。当分は病院に間借りさせてもらうさ。それは嬢ちゃんが気にすることじゃねぇ。俺の個人の問題だ」
 大人、じゃなくて個人――。
 ひとつ気になると全部が気になって仕方がない。
「相馬先生っ」
「なんだ?」
「相馬先生は優しい人ですかっ!?」
 先生は表情を固まらせる。
「……先生?」
 声をかけると、先生はカウンター向こうにしゃがみこんで見えなくなった。
「……先生、貧血? 大丈夫ですか?」
 カウンターに身を乗り出して覗き込むと、先生は床で脱力していた。
「貧血じゃねぇし……」
 ドスのきいた声が返される。
 少し怖くなってカウンターから身を引くと、
「嬢ちゃん、素直っつーか……正直すぎんのも問題だぜ?」
 先生は立ち上がって白衣をパンパンと払った。
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