光のもとでⅠ
「あのね、治療がなんだか効いているみたいなの。あまり痛みがなくてすごく楽。だからね――」
『遠慮しておく。直接伝えたいから約束の時間に携帯ゾーンにいなくていい。帰ったら病院まで行くから』
 言おうとしたことを先回りされてしまう。
「でも、すぐに知りたいし……。今日は七時過ぎに楓先生から教えてもらったんだよ?」
 電話が使えればもっと早くに知ることだってできたのに。
『治療の時間だってまだ定まってないんだろ? どのくらいのペースで施術していくのか、そのあとの身体の反応だとか、医者ならその経過観察するのも仕事だ』
 あ、そっか……。
 今日は施術後、ものすごく眠くなって眠ってしまったのだ。
『それでまた、約束が守れなかったとかうだうだ言われるほうが迷惑』
「……意地悪。でも、言われてること間違ってないから、素直に聞く」
『そうしてくれると助かる』
「……私の周りにはツカサみたいな人はツカサしかいないよね?」
 自然と笑いがこみ上げてくる。
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