光のもとでⅠ
「昇たちからは動くなって言われてたみたいだが、俺はそんなこと言わねぇよ。痛くなくて動けるなら適当に動け。じゃないと退院してからが大変だ。院内は段差っつー段差がねぇからな。けど、一歩外へ出たら段差だらけだ。そういうのひとつひとつんが障害になるぞ」
 それは去年の入院で身を持って知っていた。
 家の一階はバリアフリーだけど外は違う。
「できればスリッパもやめて運動靴にしたほうがいい。スリッパだとどうしても摺り歩きになるからな。足は上げて一歩を踏み出せ。相当つらくない限りは車椅子にも乗らなくていい」
 こんな一気に自由になっていいのだろうか……。
「体重や食事量から見ても、まだこいつは外せねえけどな」
 と、先生は高カロリー輸液に目をやった。
 先生の身長とほとんど変わらないくらいの点滴スタンド。
「ま、極力経口摂取な。おら、とっととヤク飲め」
 急かされて、慌てて薬を飲んだ。
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