光のもとでⅠ
 困るというのは、恥ずかしいとかそういうことではなく――。
「……それもよくわからない」
「あ゛?」
「格好いいと思うし優しいと思うし、会いたいとも声を聞きたいとも思う。どんな人なのか知りたいと思うけど、それが好きっていうことなのかはわからない」
「難儀な頭してんな」
 一言で片付けられ、初めての鍼治療が始まった。
 鍼を刺すときに、「吸って、吐いて」と呼吸のコントロールをされる。
 そのせいか、鍼が刺さってもひどく痛むことはなかった。
 というよりは、こんなの局部麻酔と比べてしまうと蚊に刺されたようなものだ。
 治療の前には脈診をされたけれど、ストレスや疲れ、肺の脈が強いそうで、ほかの胃腸や副腎に関しては脈が触れないと言われた。
 それはどういうことかというと、胃腸や副腎の機能が動いていないに等しいということで、肺の脈が強いと風邪をひいているか、ひきやすい状態、ということらしい。
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