光のもとでⅠ
「ちょっと残念。珍しく大きな出来事で報告ごとだったのに」
「俺は別の意味で残念。ハナを翠に会わせるのは俺だと思ってた。まさか父さんに先を越されるとは思ってなかった」
 面白くないって顔をしているツカサが新鮮。
「ハナちゃん、すごくかわいいね?」
 エレベーターの扉が開いて、足は自然と外へ一歩踏み出す。
 次の一歩もその次の一歩も軽やかに。
 それと同じくらい自然に言葉を話せる。
「この裏にあんなお部屋があるなんて知らなかった」
 ガラス戸を出て、その裏側を指す。
「俺たちの祖母が入院したときに急遽作ったんだ。――翠」
「何?」
 点滴スタンドはツカサが押してくれているのに、そのチューブにつながれている私のほうが前を歩いていた。
 振り返ると、首に何かを巻きつけられた。
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