光のもとでⅠ
 迷子の猫……?
「その迷い猫を見つけられそうなのが司しかいなくてお願いをしにきたんだ」
「そうなんですね……」
 だとしたら、あんな顔をするくらいには心配な猫さんなのだろう……。
 閉じたエレベーターのドアを見てそう思った。
「ところで、その猫さんは本物の猫さんですか?」
 ベンチに座ったまま静さんを見上げると、巨人のように思えた。
「んー……一応人間かな」
 “一応人間”……。
「“一応”でいいんですか?」
 ちょっとしたツカサの真似。
「そうだなぁ……ちゃんと人間ってことにしておこうかな。でも、男だよ」
 静さんはクスクスと笑いながら、私の隣に腰を下ろした。
「先日は驚かせてしまってすまなかったね」
「あ……湊先生とのことですか?」
「そう、栞に黙っていてくれてありがとう」
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