光のもとでⅠ
「Repeat after me.――To know the worst is good」
 日本語を話しているときの柄の悪さなんて欠片ほども感じない。
 むしろものすごく紳士っぽい響きなのはどうしてだろう。
「Repeat after me.」
 催促され、すぐに復唱する。
「To know the worst is good……?」
「スイハは耳がいいな」
「……耳だけかも」
「なんにせよ、最悪を知ってる人間ってのは案外強いもんだ。スイハ、おまえは弱いだけじゃねぇよ」
 意外なことを言われて、まともな反応ひとつできないうちに相馬先生は病室を出ていった。
「私、弱いだけじゃない……?」
 耳にこだまする言葉を胸に、ベッドで横になった。
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