光のもとでⅠ
 栞さんの声が聞こえなくなると、すぐにPHSの着信音が鳴り響いた。
「ほら、これ使っていいから横になれ。血圧が上がってくるまで身体起こすなよ」
 支えてくれている手をそのままに、肩を押され、ベッドへ横にされた。
 視界が回復するのにはまだ時間がかかる。
 その私の手に、硬いものが押し付けられた。
 たぶん、PHS……。
「もう、話せる。俺はナースセンターにいる」
「先生、ありがとうございますっ」
「だから……電話もうつながってんぞ?」
 ケラケラと笑いがなら、きっと呆れた顔をして病室を去っていったのだろう。
 普段はしない足音がだんだんと遠ざかっていった。
「ツカサ……?」
『翠? ……何、今の会話』
「あ、えと……」
 言ったら怒られそうだ。
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