光のもとでⅠ
「悪い、これ以上は話せない……」
「ツカサ、ひとつだけ教えて?」
「答えられることなら」
「これ以上話せない理由は何? 知っているけど話せないの? 知らないから話せないの?」
「……後者。どんなことがあったのかは粗方わかってる。でも、どの部分が引き金になって記憶を無くしたのかはわからない。俺の目の前で起きたことだけど、俺はその事柄すべてを把握することはできなかったし、翠が何を感じて記憶を無くしてしまったのか、そこまではわからなかった。……想定しようと思えばできる。でも、それは俺個人の見解であって、真実ではない。だから、話せない」
「……すごくツカサらしい理由だね」
「なんで笑う……?」
 言われて、自分が少し笑みを浮かべていることに気づく。
「私は……色々と知りたいこともあるけれど、ツカサを困らせたいわけじゃないし、確信がないことを口にするのは憚られる、というのもわからなくはない。だから、そういう理由なら訊き出そうとは思わない。……いいよ。明日、藤宮秋斗さんに会う」
 最後は意識して笑みを添えた。
< 2,590 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop