光のもとでⅠ
「もう少し時間を置いてからでもいいんじゃないかしら……」
「どうしてですか……?」
 訊けば黙りこんでしまう。
 それ以前に、いったいいつその話を知ったのだろう。
「ツカサが昨日言ってました。私の記憶がなくなったのは、自分と藤宮秋斗さんに原因があるかもしれないって……」
 栞さんは衝撃を隠せないといった顔をしていた。
「でも、本当のところはわからないのでしょう? 私はそのときのことを覚えてもいなければ詳しくも聞いていないし……。その場にいたツカサですら、私が何を思っていたのかはわからないって言ってました」
 私、何が言いたいのかな……。
「……わからないから遠ざけておきたいと思ったの」
 栞さんは苦笑してこちらにやってくる。
「そっか……そうよね。翠葉ちゃんはわからないからって遠ざけておきたいわけじゃないのね」
 問いかけられて、少し複雑な気分になる。
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