光のもとでⅠ
「栞さん、ひとつだけ予備知識をください」
「何……?」
「藤宮秋斗さんは怖い人ですか?」
「……どうして?」
「なんとなく、です」
「その、なんとなく、はどこからきたの?」
「夢、かな……」
 夢でツカサと藤宮秋斗さんを見たとき、どうしてか鳥肌が立ったのを覚えている。
 そのときは、どちらを見てなのかはわからなかった。
 でも、ツカサと会って、ツカサではないと思った。
「夢……それは最近?」
「夢なら何度か見ましたよ? 記憶を無くした直後に見た夢と、そのあとにも誰が出てる夢かわからないけど、自分が謝ってる夢とか……」
 だから、もしかしたらツカサや藤宮秋斗さんが悪いのではなく、自分が何かをしてしまって、そのことから逃げたくて記憶をなくしたのかも――と、そう考えずにはいられなかった。
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