光のもとでⅠ
 秋斗さんの言葉を全部聞き終わる前に、秋斗さんの胸に額をつけた。
「すい、は、ちゃん――?」
「ごめんなさい……。少しだけ、少しだけでいいから……」
 そう言うと、秋斗さんの右手が背中に回された。
 しっかりと抱きしめてくれる。
「少しだけなんて、そんなもったいないこと言わないで。俺はずっと抱きしめていたい」
 このぬくもりが好きだった。とても心地よかった。
 離れようとしたら、逆に力をこめられた。そして、それまでよりも強く抱きしめられた。
「翠葉ちゃん、俺もひとつお願いしていいかな」
 ひとつのお願い。
 私が叶えられることならなんでも叶えたい。でも、答えは慎重に答えなくちゃいけない。
 この空気に、想いに流されたらだめ――。
「聞けるものならば……」
「……ずいぶんと答えまでに時間がかかったね」
 クスリ、と笑う。
「キス、してもいい?」
 至近距離でのお願いにドキリとする。
 ……今日だけだから。だから、いいよね?
 でも、キスをしたら気持ちが抑えられなくなりそう――。
「ごめん、訊いたけど答えを待てそうにはない」
 と、そのまま口付けられる。
「……んっ――」
 今までのキスとは違う。
 唇が触れるだけのキスではなかった。
 離れたかと思えば角度を変えてまた口付けられる。
 口の中を秋斗さんの舌が這い、私の舌に絡み付く。
 どうしたらいいのかわからなくてなされるがまま――。
 そうしているうちに唇は放され、ぎゅっと抱きしめられた。
「返事聞かなくてごめん。それから、びっくりさせてごめん」
 抱きしめられたまま、フルフルと首を横に振る。
「でも……我慢できないくらい、そのくらい好きだ」
 心臓はすでに駆け足を始めていて、うるさいくらいにドキドキ鳴っている。
 背中に回された腕が緩み、秋斗さんの顔を見上げると、
「歩こうか……」
「はい……」
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