光のもとでⅠ
 ただ、周りの人たちが記憶に関することを話したがらないのはそういうことなのか、と少し合点がいった。
 でも、だからといって、自分の過去から逃げていいものか……。
「どうしたい?」
 秋斗さんに訊かれる。
「私は……秋斗さんとツカサがつらい顔しないで済むのがいいです」
 秋斗さんを見て答えると、秋斗さんは少し驚いたような顔をした。
「そうだった……翠葉ちゃんってこういう子だったよね」
「こういう子……?」
「うん……人のことばかり考えて、自分のことは後回し。そういう子……」
 そういうわけじゃないんだけどな……。
「ただ、大切な人が悲しい思いをするのは嫌だから……それは自分が嫌だから、です」
「……記憶がなくても、俺のことも大切な人に入れてくれるの?」
 目を見開いて訊かれる。
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