光のもとでⅠ
「悪い……翠、手の力抜いて大丈夫だから」
 気づけば、手がうっ血するほどにお布団を握りしめていた。
 力を抜け、と言われても、どうやったら力が抜けるのかすらわからない。
 戸口にいたツカサがベッド脇まで寄ってくると、自分の手にツカサの手が伸ばされた。
 それまではどうやったら手を動かせるのか、そんなことも忘れてしまったふうだったのに、ツカサの手から逃げるように手を避けた。
「っ……ごめんなさいっ」
「……力抜いてくれればそれでいいから」
 ツカサはベッドサイドから遠ざかる。
 遠い――。
 たった二メートルくらいの距離なのに、とても遠く感じる。
 これはなんだろう……。
 心の距離……?
 私を射るように見ていた目は、今度は秋斗さんへ向けられていた。
 秋斗さんもそのことに気づいていたけど、ツカサには何も答えずに私を気遣う。
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