光のもとでⅠ
「ストレスが引き起こした痛みは、やがて痛みという独立したものだけでさらなるストレスを引き起こす。それが慢性化ってやつだな。それは知覚神経に記憶され、さらには痛みを増幅する。それがスイハの状態だ。記憶を無くしてから痛みはどうだった? 少しは軽くなったんじゃないのか?」
 先生はどこからどこまでを知っているのだろう。
「経過は昇と桜森から聞いてる。俺はこんなナリしてても医者なんだよ」
 そう言って少し笑って見せた。
 それは私にではなく栞さんに向かって見せたもの。
「では、今回の件も治療の一環だと?」
 栞さんが固い声を発すると、先生は「そうだ」と肯定した。
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