光のもとでⅠ
「ハサミを取ってほしいと言われたんだ。俺は意味も理解せず、とても安易にハサミを取って渡した」
 ……ハ、サミ?
「文具用品のハサミ。カウンターに置かれたグラスに刺さっていた持ち手が青いスケルトンのハサミ」
 それは私の部屋にあるハサミだった。
「なんでハサミ? って思った。その時点で気づくべきだった」
 秋斗さんは一度俯き、意思を固めたように顔を上げた。
「ハサミを渡したら、君は自分の髪の毛を切り落とした」
 っ――!?
「左サイドの髪の毛を一束掴み、躊躇なく切り落とした。何が起きているのかわからなかった。止めることもできなかった。呆然としている俺に、君はその髪の毛を差し出し、それだけじゃ足りませんか? って訊いた。そして今度は右サイドの髪に手が伸びた。そこでようやく声を発することができたんだ。右の髪の毛は切らせずに済んだけど――」
 秋斗さんは言葉に詰まって俯いた。
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