光のもとでⅠ
 夏休みに入ってから、唯兄の提案で海斗くんとツカサの携帯へ転送されていたバイタルデータの送信は打ち切られたという。
「あの日、部活が終わってから姉さんに幸倉に呼びつけられた。部室を出た直後に秋兄から電話がかかってきて、そのまま駐車場でピックアップされて幸倉へ向かった。車の中でだいたいの状況は教えてもらったけど、細かなやり取りを聞いたのは今が初めて」
 きっと呆れているのだろう。
「俺が行くまでにそれだけのやり取りがあれば、俺じゃなくてもきっと誰が説得にあたっても説得できたんじゃないかと思う。俺だから説得できたわけじゃない。ただ、翠の身体も精神的にももう限界だったんだ……」
 ツカサの言葉に秋斗さんが口を開く。
「無理だったんだ……」
「最後に秋兄がまた説得に入っていたら違ったかもよ?」
 温度のない言葉のやり取り。
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