光のもとでⅠ
 秋斗さんは少し笑って、「そうしようか」と請合ってくれた。
 休憩になると手が放される。
 私は秋斗さんに少し避けてもらって病室を出た。
 静さんにもツカサにも、誰にも何も言われない。
 私はこれ幸い、とひとり点滴スタンドを持って廊下に出たのだ。
 廊下に出てびっくりする。
 栞さんと昇さん、湊先生と楓先生まで揃っていた。
「翠葉ちゃん、どこに?」
 栞さんに訊かれ、咄嗟に「お手洗い」と答える。
 そのまま二歩後退して、病室の脇にあるトイレに入った。
「……すごく後悔、逃げ出すようなところ見られちゃった……」
 実際、逃げ出してきたようなものだった。
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