光のもとでⅠ
 ソファに座り、蒼兄が話し始める。
「あのさ……翠葉はまだ十七歳なんだ。大人に甘えていい年なんだよ。どこからが大人かって訊かれると俺も困るけど、でも、少なくても湊さんや栞さんは十分に大人なんだ。さらには湊さんは翠葉のメインドクターだろう? だからいいんだよ」
 いつものように、頭をポンポンしてくれる。
「そうなのね……」
 なんとなく納得できたようなできていないような……。でも、目の前の薬を飲まなくちゃいけないことに変わりはなくて。仕方ないからそれらに手を伸ばし、グラスの水を飲み干した。
「はい、飲んだたらとっとと横になりなさい」
 私のベッドの真横に出してある簡易ベッドは、簡易ベッドといえど、これも蒼兄のデザイン設計で、スプリングもいいものを使っているし、枠に使われているパイン素材も粗末なものではない。
 蒼兄はそのベッドに横になりながら小難しい雑誌を読んでいる。
「こうやって一緒に寝るのは久しぶりだね」
 話しかけると、
「そうだなぁ……。前は結構頻繁に一緒に寝てたもんな」
 と、思い出し笑いをする。
 この部屋ができる前の私の部屋は六畳ほどの広さで、広くもなく狭くもなくひとりで過ごす空間としては最適なものだった。
 しかし、この部屋は十畳ちょっとある。
 ひとりで過ごすのには無駄に広すぎるのだ。
 それが時に、ものすごく寂しさを助長させ、しばらくはひとりで眠ることができなかった。
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