光のもとでⅠ
「まず痛みがストレスになる。ストレスは交感神経を優位にする。そして起るのが血管収縮、抹消循環障害。それらから組織の酵素欠乏が起り、発痛物質が産生されると知覚神経が興奮する。知覚神経が興奮すると痛みというシグナルに変わる。それらがストレスに変わって延々ループだ。このループから出るためには痛みを止めるしかねぇ。知覚神経に痛み事体を忘れてもらう」
「そんなこと、できるんですか?」
「……まずは食え」
「あ、ごめんなさい……」
 どうも、話を聞こうとすると手が留守になる。
 難しいことを理解しようと思えば、目の前にお豆腐が置かれていることすら忘れてしまいそうになる。
 そんな私を見るに見かねて、食事を先に、と先生は言ったのだろう。
 そして、先生は私に用意したご飯を美味しそうに食べ始めた。
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