光のもとでⅠ
「痛いのは治療を受けるのも治療をするのも嫌いだ。それに、人が死ぬのも嫌いだ。だから、そういう現場の医者にはならなかった」
 少し拗ねたように、けれども俺様口調のまま口にする。
 それがとてもらしくなくて驚く。
「先生だったら、どんな太い注射が出てきてもしれっとしていそうなのに」
「冗談じゃねぇ。俺の専門はカイロプラクティック。鍼は仕方なくやってるだけだ」
 先生は実家が鍼灸院であることと、その鍼灸院の跡取りであることを教えてくれた。
「カイロは俺様がいればそれでいいんだ。場所も選ばなければ道具は俺の身体ひとつあれがこと足りる。患者に痛い思いをさせることもなければ死に目に遭うこともない」
 そう口にした目が、とても悲しそうに見えた。
 本当に痛いものが嫌いで、痛い思いをしている人を見るのもつらいんじゃないか、と思うような顔をする。
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