光のもとでⅠ
 教室に着くと、一番のりだった。
 席に着いて、そのまま机に体を預ける。
 机に当たる陽射しがだいぶ強くなってきた。
 カーテンを閉めると、窓から吹き込む風の流れがわかる。
 風……。
 自由気ままに吹く風になれたらいいのに――。
 そしたらひとりでどこへでも行ける。森林の中をそよぐこともできるのだから、風になれたらどれだけ幸せだろう。
 そよ風が癒しだとしたら、突風は気性が激しい感じ? 台風や竜巻は怒り、かな。
 そんなふうに風の状態を感情にたとえていると、しだいに教室が賑やかになり始めた。
 時計を見ると八時半まであと数分。
 前の椅子が動くと声をかけられた。
「薬、飲み始めたって?」
 海斗くんだ。
「うん、昨夜から」
「大丈夫なのかよ?」
「んー……午前中は大丈夫でありたいと思ってる、かな」
「因みに、俺の携帯と司の携帯にも翠葉のバイタルが表示されるように改良されたから」
 と、携帯を印籠のようにずい、と目の前に差し出される。
 ディスプレイには私のバイタルが表示されていた。
「え……?」
「秋兄がさ、自分がずっとついていられるわけじゃないから、近くにいる人間が知っていたほうがいいって。昨夜のうちに設定済ませてくれた」
「……そう」
「……結局、振っちゃったんだな」
「うん……」
「でも、そのくらいで諦める人じゃないから。だから落ち込まなくていいと思うぞ」
 それはすでに昨日ご本人様から申し渡されているわけで……。
 そのことに関しては、もうなるようにしかならないと思ってる。
 だって、私にはもうそんな余裕はないのだから――。
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