光のもとでⅠ
 あれは私が二十歳のとき、医大に通っていた私を呼び止めた男がいた。
 いつものナンパだろうと無視を決め込んでいたわけだが、その男は大学から家まで延々と着いてきた。
 決して家の中へ入ろうとはしなかったが、来る日も来る日も付きまとわれ続けた。
 カフェに入れば私の了解も得ずして合い席に座る。
 そんな不遜な態度も気に食わなかった。
 自分のことをお嬢様と言うつもりは毛頭ないが、それでも藤宮の中で育った自分は紳士淑女に囲まれており、こういった扱いを受けることはまずなかった。
 けれども、警護の人間たちが動かないのならば、さほど問題のある男ではないのだろう。
 そうは思っても、こんなことが続けば私の堪忍袋の緒も持ちはしない。
 我ながら、よく我慢したと思う。
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