光のもとでⅠ
 ちょうどお見合い話もこなくなりつつあり、平穏な日々を送っていたというのに……。
 ぶち切れた私はここぞとばかりに口頭攻めを繰り出した。
 言いたいことを言い切ってすっきりした、と思った次の瞬間には唇を奪われていた。
 その当時、私は誰ともキスをしたことがなかった……。
 初めてしたキスがディープキスとかあり得ない。
 もっとあり得ないのは、そのキスに自分が腰を抜かしてしまったこと……。
「……ずっと忘れてたのにっっっ」
 その後、めっきりと姿を現さなくなり、こちらも存在を忘れることができ、キスのことだって今の今まで思い出さずに済んでいたものを――。
「なんでいきなり現れるのよっっっ」
 もうひとつのクッションを投げつけ、ソファにうな垂れる。と、ノックの音がし部屋のドアが開かれた。
 入ってきたのは静だった。
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