光のもとでⅠ
「夕方前から所在がつかめない」
 静の顔は嘘を言っているようには見えず、分刻みで動いている人間がここまで赴いた理由はそれか、と思った。
「少し座らんかい?」
 仕立てのいいスーツが汚れるかとも思ったけど、静はそんなことを気にせずに座った。
「現れるとしたらここしか思い浮かばなかった。碧と零樹に謝罪に来る、そう思っていたんだが、ここへは来ていないようだな」
「……みたいだね。何、来たら捕獲しておけばいいわけ?」
「頼む」
 その声に、「心配」なんて言葉はそぐわない。
 もっと大きな感情、まるで、親が子を思うような、そんな愛情が見え隠れ。
「俺も彼とは色々と話してみたかったんだよね。だから来たら拉致しておくよ。軽く軟禁とかさ」
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