光のもとでⅠ
 佐野は人好きする顔をくしゃりと崩して笑った。
 家に帰ればシルバーチェーンくらい母さんが持っているだろう。
 それに通せばアクセサリーに見えなくもない。
 手にあるとんぼ玉に視線を落とし、翠が付けているところを想像する。
「まるで猫に鈴だな……」
「は? なんか言いましたか?」
「いや、何も……」



「ただいま」
 玄関を開けると、ハナがリビングから顔だけを出す。
 出てくることはないものの、「早く早くっ」と言っているのが目でわかる。
「おかえりなさい、どうだった?」
「二位入賞」
「あら、すごいじゃない! おめでとう!」
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