光のもとでⅠ
 秋兄は目を輝かせて話に飛びつく。
 なんか、無邪気すぎやしないか……?
 そんな感想を持てば持つほど、心配して右手を腫らすほどにエレベーターの壁を殴った自分がバカみたいだ。
 でも、ここでしか見せられない顔もある、か――。
 向こうに戻れば嫌でも仕事漬けの毎日だし、それなりの重責もあるわけで……。
 あぁ、逃げたのは翠からだけじゃないのかもしれない。
「すべてのもの」から逃げたかったのかもしれない。
 秋兄はなんでもそつなくこなすけど、すべて要領よくこなしているわけじゃない。
 その影には努力だって膨大な時間だって費やしている。
 秋兄の場合はそれを人に見せないだけだ。
 ゆえに、人に見せられる部分が少なすぎるのかもしれない。
 俺は一緒にいる時間が長いから色んな面を知っているにすぎない。
 そうだ――人間なんて誰もそんなに完璧でも強いわけでもない。
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