光のもとでⅠ
「司、置いていくぞ!」
 別に置いていってくれてもかまわないんだけど――今日くらいは秋兄に付き合ってもいいだろうか。
「……一件連絡入れさせて」
「……静さん?」
「そう。何時にここを出る?」
 秋兄の表情が明らかにかげる。
「……三時半」
「了解。自分でかけたければ譲るけど?」
「いや、あと少しだけ甘えさせてよ」
 秋兄は珍しくもそんな言葉を口にした。
 まるで、夏休みのキャンプが楽しくてまだ帰りたくないって思っている少年みたいな顔。
「じゃ、少し待って」
 秋兄は頷くと、稲荷夫妻の手伝いを始めた。
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