光のもとでⅠ
 十階に着き、自分の家のドアを開けると蔵元がリビングから出てきた。
「おかえりなさいませ」
 笑顔で出迎えられたものの、その笑顔が機械的で怖い。
「秋斗様のお仕事はすでにお部屋の方へ運ばせていただいております。それから、当面の段取りはこちらでさせていただきますので打ち合わせの必要はございません」
 蔵元に促されて仕事部屋へと足を運ぶ。と、ドアを開けて絶句した。
「蔵元、これっ――」
 誰か引っ越してくるのだろうか、というほどのダンボールが積まれていた。
 すべての箱に、「社外秘」という文字を貼り付けて。
 蔵元を振り返ると、
「いい気味です」
「え……?」
「終わりの見えない仕事に打ちひしがれる様がたまりませんね」
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