光のもとでⅠ
 病室を振り返ると、相変わらずドアは開けたままになっていた。
 あまりの静かさにノックはせず病室を覗いた。すると、ベッドの上で横になり、とんぼ玉を嬉しそうに眺めている翠がいた。
 まるでそれしか目に入っていないような顔で、大切そうに愛でている。
 そんな言葉がしっくりときた。でも――。
「寝るときくらい外せ。危ないだろ?」
 気づけばそんなことを口にしていた。
 急に声をかけたからか、翠は驚いて声も出ない。
「いつからそこにいたの?」という顔で、けれど、すぐに表情を改めて「おかえりなさいっ」と言われた。
 やっと見ることができた――曇りない満面の笑みを。
「ただいま」
 しかも、首には俺のあげたとんぼ玉がぶら下がっていて、未だ翠の手中にある。
 嬉しいものだな……。
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