光のもとでⅠ
 不安が全くないわけじゃなかった。
「じゃ、これ……」
 手に持っていたとんぼ玉を翠の手の平に乗せる。と、
「これね、本当に嬉しかったの……。ありがとう」
 またか……。
「……何度言ったら気が済むの?」
「え? わからない。……そうだな、思うたびに言うんじゃないかな」
「あぁ、そう……」
 なんか少しだけわかった気がする。
 翠はそのときに思ったことを相手に伝えようとしているだけなんだ。
 だから、そのときに「ありがとう」と思えば「ありがとう」と口にするし、「ごめんなさい」と思ったなら「ごめんなさい」。嬉しいときには「嬉しい」。
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