光のもとでⅠ
 ――なら、どうしてつらいときや悲しいときに同じことができないんだ……。
 どうせなら全部口にすればいいものを。
 翠の話に耳と傾けていると、
「ねぇ、知ってる? 昇さんってお医者さんになる前はクーリエになりたかったんだって」
 初耳というよりは寝耳に水。
「……初耳。クーリエって絵画とかの修復師だろ?」
「うん、学芸員になって修復師になりたかったんだって」
「で、なんで全く関係ない職種に就いてるの?」
 美術と医学って全然違うだろ……?
「私もそう思った。あのね、栞さんと結婚するなら医療従事者が都合いいと思ったんだって」
 ますますもって信じられなかった。
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