光のもとでⅠ
 本当に、誰にも何も言わないつもりなのか――?
 病室に入るとき、一瞬だけ翠と目があったけど、それを無視して話を再開させた。
 今までの、会話の流れを一切合財切り捨てて――。
「司先輩」から「ツカサ」と呼んでもらえるようになって嬉しいと思った。
 それを足がかりに近づけている気がしていた。
 けど、それすらも勘違いだった。
 いっそのこと、ずっと他人行儀に「司先輩」と呼ばれていたほうが良かったのかもしれない。
 今は――名前の呼び方こそ親しい間柄に見えるものの、実際はそんな間柄でもなければ、信頼されているわけでもない。
「ツカサ、そんな読み上げるような話し方じゃ翠葉ちゃんはついていけない」
 秋兄が止めに入ることは想定済み。
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