光のもとでⅠ
「悪いけど、今絶好調に不機嫌だからかまわないでもらえる?」
「あんたの機嫌がいい日なんてないじゃない」
「それはどうも」
 だったら三百六十五日永遠に声をかけてくれるなっ。
 姉さんはなんでそんなに余裕なんだ? 仮にも翠の循環器内科の主治医だろ?
 どうしてこんな――違う……。
 あのモバイルディスプレイを相馬さんに渡した時点で、翠のことを相馬さんに託しているんだ。
 その相馬さんが何も言わないのに自分が口を出すなんて真似は、この姉はしない。
 ピリピリとした空気の病室にPHSの音が鳴り響く。
 それは藤原さんからの電話で、俺と秋兄を十階に呼びつける内容だった。
 正直、行きたくなかった。
 この先の会話なんて聞きたくなかった。
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