光のもとでⅠ
 一階に着き通用口へ向かって歩くと、歩みを進めるたびに湿気を帯びた生温かい空気が肌に絡みだす。
 妙に心地がいいと思った。
 プールから上がってバスタオルに包まれるような、そんな感覚。
 キンキンに冷えた頭を安心して預けられるような安息感。
 じわりじわり――飽和しきった空気に身を委ねたいと思う。
 自転車――。
 視界の隅に自分の自転車をとらえるものの、どうしてかそれが歪んで見える。
 まるで陽炎のようだった。
 地面が熱を持っているからなのか、それとも――。
「俺、疲れてるのかな……」
 メガネを外し、少しだけ目を擦る。
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