光のもとでⅠ
 もう、煮るなり焼くなり好きにしてくれ。
「だから防水のに機種変すればって言ったのに」
 うるさい……。
 じとりと睨むと、
「はいはい、あとで機種変してきてあげるわよ。じゃ、私は昼ご飯の用意を手伝ってくるわ」
 短時間だというのに、喋れないことがかなり苦痛だった。
 次に熱を出すときは声だけは死守したい。

 冷房は二十八度設定。窓が少しだけ開いている。
 とにかく熱い……。
 熱を下げるために、頭に氷嚢、背中と脇には冷却シートを貼られた。
 翠はこういう発熱を年に何度出すのだろうか……。
 俺は発熱して喉をやられるくらいだけど、翠は必ず胃腸にくるといっていた。
 嘔吐が始まると水すら飲めず、薬の投与が注射か点滴になると――。
 俺よりも体力のない人間が、俺よりもひどい風邪を何度もひく。
 俺よりも気をつけて生活している人間が、俺よりも簡単に発熱する。
 何もかもが不公平すぎる――。
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