光のもとでⅠ
 新しい携帯が気になるといえば気になる。が、今は頭が痛くて文字を追う気にもならない。
 熱が下がるまではおとなしくしておこう。
 携帯は充電器に乗せたまま放置していた。だから――翠から電話がかかってきてたことも、メールが届いていたことも、何も気づかずにいた。
 熱を出したことで翠のことを何度か思い出したものの、それ以外では身体がだるいのと頭痛のひどさに何を考える余裕もなかった。
 どんな状況で昨日別れたのかなんて、思い出す余裕もなかったんだ。
 起きてはご飯を食べ薬を飲み眠る。ただ、自分の身体の回復のために時間と体力を費やした。
 俺がそんな日々をすごしている間、翠が不安な毎日を過ごしているなど知りもせず――。
< 3,009 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop